記憶の破片

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「沖田さん、沙知さんが来ました」



今日はいつもよりは体調がいいみたいで沖田さんは本を読んでいた。



「沙知さんが…」



沖田さんはそう呟いて、本から顔を上げて私を瞳に映す。



「じゃぁ、屯所の側にある和菓子屋の大福買って来てもらえますか?」



…私を追い出そうとしてるよね。


本当は仲間外れとかして欲しくないけど。


何も言えなくて。


私は頷くしかなかった。



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大福を買って、わざとゆっくり帰ってくると、もう沙知さんは帰ったあとで。


代わりに土方さんが沖田さんと話していた。



「あ、お帰りなさい、綾さん」



私に気付いた沖田さんがにっこりと笑いかけてくれた。


それだけなのにすごくドキドキする。



「じゃぁ、そろそろ行くな」



土方さんは沖田さんを優しい眼差しで見たあと、部屋から立ち去って行った。



「何のお話をされていたんですか?」



気になって尋ねてみた。



「ちょっと真面目なお話と土方さんのノロケ話ですよ」



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