記憶の破片

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「ダメですよ。起き上がったりしちゃ…」



今、無理でもしたら。


沖田さんはすぐにこの世からいなくなってしまう気がしてならない。



「大袈裟ですよ」



苦笑いしながら、刀を鞘に戻して元の場所に置く。



「でも…お願いだから、安静にしていてください」



正座した膝の上に置いた手が震える。


私がこう言ったところで自由奔放な沖田さんが変わるとも思えなかったけど。


言わずにはいられない。


一瞬でも永く、一緒にいたいから。


たまご粥をゆっくりとしたペースで食べる沖田さんを見て、そう強く願った。



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「こんにちは」



珍しく、沙知さんが土方さんの小姓の鉄之助さんと来た。


心なしか、沙知さんの表情も疲れているように見える。


今、新選組内は大変なことになっていると、私でもわかる。


副長の許嫁である沙知さんにも少なからず疲れはでているだろう。



「沖田さん、今、起きてますか?」



遠慮がちに尋ねられて、嘘は付けない。



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