記憶の破片

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「ごほっごほっ」



「沖田さんっ」



沖田さんは体調がよくない。


しばらく寝込む毎日が続いている。


本人は元気だと言い張るけど。


顔色は悪いし、体力だって確実に衰えているのが、目に見えてわかった。


私は土方さんに頼まれて沖田さんのお世話をしている。


正確には私から立候補したんだけど。


だって他の人に沖田さんのお世話なんかさせられないし。


して欲しくない。



「沖田さんっご飯ですよーっ」



お粥の入った小さな鍋をお盆に乗せて、襖を静かに開ける。


開けた途端、目に入ったのは上半身だけ起き上がらせて。


刀を構える沖田さん。


まるで沖田さんの周りだけ違う空間のような気さえする。


真剣な眼差しも。


すっと伸びた背筋も。


全てが綺麗すぎて、思わずぞくっとした。



「ありがとうございます、綾さん」



私が来たのに気付くと、表情を一変させる。


にこにこしたいつもの沖田さん。


私はやっとほっとして中に足を踏み入れた。



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