わたしは、夫を愛しております。


もう何年も前から、口下手で、照れ屋の為、

直接、口には出してくれませんでしたが、

わたしをとても愛してくれているのが、わかっておりました。

何よりも、大切にしてくれていることを。


だけど、

わたしを、実際に愛することはできませんでした。

わたしを抱くことは、できなかったのです。


そんな女を…

あの人は、


それでも大切にしてくれました。


いつも笑顔で、優しく微笑んでくれました。


そんなあの人に、

わたしは、微笑み返すしかありませんでした。

能面のように、笑顔を張り付けて、わたしは…夫のそばにいたのです。

この居場所だけは、失いたくなかったからです。



わたしが自分でつけた…この傷よりも、

あの人が負った傷の方がどんなに痛んでいることでしょう。

あの人に、罪はありません。


あの人に…罪なんてあるはずがないのです。