その後、高田の息子が亡くなった。
その年のクリスマス・イブの日だった。

それ以来、清貴は自分の仕事に不信感を抱くことになった。

自分のやっている仕事は、本当に正しいことなのか?

会社のためには正しいことでも、一人の人間の人生を狂わせることをしているんではないか? 

このまま仕事を続けていれば、一体自分はどんな人間になるんだろう・・・。
仕事とはいえ冷酷な人間になってゆく自分の姿が怖くなった。

「そうだったんですか・・・それで会社を辞めたんですね? 」

清貴が会社を辞めた経緯を話すと、山城は静かにうなずいて尋ねた。

「えぇ、それから自分でも解雇リストの人間のことをいろいろ調べるようになりました。何人かは会社に残ってもらえてもいい社員もいました」

「・・・」

「そんな社員を解雇するのを考え直すように上役にも相談してみましたが、受け入れてはくれませんでした。そんな会社に自分も失望して、気がつけば会社に辞表を出していました」

清貴が無念そうな表情で話した。