「私も慎吾君の家庭のことは知らなくもない。慎吾君に父親が出来て、経済的にも母親が働きに行かずに家に居てやれたら、慎吾君は、もっといい家庭環境になるかもしれないとは思っています。でも・・・」

上田は口を閉ざして、しばらく考えた。

「でも、長嶋先生わかってほしい。教師は所詮、そこまではできないものなんだ。それに、この分校の正教職員も来年度の身の振り方で、やっかいな問題を起こしたくないんだ」

上田が丁寧な口調になった。

清貴は何も言えなかった。

突然、職員室の扉が横に流れて、年配の男性が職員室に入ってきた。
男性は白髪でスーツ姿だった。

「おはようございます」

男性は元気な声で挨拶した。
男性は、校長の山城だった