「長嶋先生は、代行教員だから、そのことを話す必要がないと、上田先生から言われていたんですが・・・」

「・・・」

「今年度で、この分校が終わってしまうのに、私達を含めて教員は、もっと生徒達と、この学校で過ごす時間を大事にするべきだと思うんですけど・・・ 」

永岡から涙がこぼれおちてきた。
永岡は席を立った。

「なんか、私、悔しくて・・・みんな自分のことしか考えてなくて」
永岡は窓越しに立って、清貴に背中を向けて泣いていた。

清貴は、その姿を見て永岡が仕事に対しての純真な気持ちを感じた。

突然、教室の扉が開いた。
青いワンピース姿でショートカットの女性が立っていた。

「稲垣の母です」
と、言って教室に入ってきた。

清貴は席を立った。

永岡は慌てるように涙をハンカチでぬぐって席に戻った。

「どうぞ、こちらへ」」
清貴は、慎吾の母親を席に案内した。