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「わかったから、今から竹採ってきてやる」



フッと口元がゆるむのが自分でわかった。



「ありがとう、歳さん」



とびきりの笑顔で言われて。


俺の体温がわずかに上がる。



「私、沖田さんたちの所行ってきますっ」



相当嬉しいんだろう。


小走りでさっさと行ってしまった。


こういうとき、なぜだか寂しいと感じたりする。


鬼副長と恐れられている俺だが、沙知が絡むとどうにも狂う。


傍に置いておきたいと思う。


そんな己の願望を感じながら太い竹を一本折り、担いで帰った。



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「あっ、土方さんお帰りなさーい」



総司【そうじ】が俺に気付き駆け寄って来た。


コイツとの付き合いもかなり長い。


ガキの頃から知っているくらいだ。



「鬼副長も沙知さんには勝てないんですね」



「うるせぇ」



図星、だ。


まったく…総司にも適わないとつくづく感じる。


なんでもお見通しって口調で話してくるからだ。



「沙知は?」



「紙に筆を走らせてますよ」



聞きながら柱に麻紐で竹を縛り付けた。



「歳さん、お帰りなさいっ」



障子の向こうから沙知がひょこっと顔を見せた。


手には数枚の短冊が握られている。



「歳さんも書いてくださいっ」



なかば強引に紙と筆を渡された。



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