「男女がただ星を見て何が悪い。そういう雰囲気にならなかったんだよ。」
「そうか、じゃあ来週に好ご期待だな!」
「来週?」
「ああ、この間オトモダチになった女の子に飲もうって言われてよー。」



全く。職権乱用とはこの事だ。タクヤは感度抜群のアンテナを張り巡らせて仕事をしている。



契約も楽しい飲み会も、同時に手に入れてしまうタクヤで、恋だ愛だと騒ぎ立てる割りには、かなり打算的な男だと思う。



だが。



「いや、僕、パス。」
「あん?」



このままの感情を持て余したまま酒の席に参加したところで、普段以上につまらない男になるだろう。
友人の顔に泥を塗る羽目になることはしたくない。



「いや…、ちょっと久しぶりにさ、いいなと思う子なんだよ。あの子。」
「触れられない程にか。」
「そうだ。」



タクヤは一瞬僕を見、何事かを考えながら、しばらく煙草をくゆらせていたが、短くなったそれを丁寧に灰皿に押しつけた。



「お前、好きでもない奴とは寝れるのに、好きな奴とは寝れねぇのな。普通逆だろ。」



そうなのか。 
よく考えた事が無かった。