どういったわけか、彼とは非常に馬が合い、いつしか遠い昔からの友人のような関係に落ち着いていた。




「タローはつまんねぇなあ。冷めてるね。」



いつもの居酒屋で、新しいタバコに火を点け、幾分か廻らなくなった口でタクヤが言う。



「そうか?後腐れして泣かれるのが嫌いなだけだよ。」
「全く、若いくせになんて野心がないんだ!」



僕のほんの少し芽生えたかに思えた恋愛ゲームが終わりを告げた事をタクヤに伝えたら、案の定。



「あーあ、どうして頭でレンアイしちゃうかね、こいつは。」



「身体だけで恋愛できるような歳じゃないだろ。」



3ヶ月程前の合コンで出会った、『ユカ』。キツい瞳が印象的だった彼女とは、互いの素性を探り合うほど深い関係ではなかったが、僕は彼女の意地悪そうに目を薄めて笑うあの表情が好きだった。



何度か二人で会い、そういったことにも成り行きでなったが、ある明け方に、



「今度はいつ会えるの?」


「うん。…いつかな。」



「来週末あたり?」



「…うん、そうかも。」



軽く流したのが悪かったのか、彼女は多少なりとも甘やかなその場に、そぐわないヒステリックな声で、



「遊んでるつもり?誘うのはいつもあたしから。タローから誘ってくる事なんてなかった!」



「そんなつもりは、」



「あたし知ってる!タローの携帯に沢山女の名前が入ってるの!」



心のどこかで、ぷち、と何かが切れる音がしたが、深いため息をつくことで、最後の最後にひどい男にならずに済んだ。



「タローとならずっと一緒にいてもいいと思ったのに。」



あぁ、なんて。



「そういう高飛車なトコが」



「え?」



「嫌いじゃなかったんだけどな。」



それだけ告げて彼女のアパートを後にした。ユカは言葉の意味が分からず、何も言えないでいたようだった。