有り難いことに、タクヤとは好みがバッティングしない。



それは僕たちがつるむ理由の一つかも知れない。




合コンの度に携帯のメモリーが増えるわけでもなく、今夜はタクヤのメモリーに一件。



『ミナちゃん』



が、登録されただけだった。



携帯ショップの雇われ店長のタクヤは流行に敏感で、どちらかと言うと出不精の僕を外に出そうとする。



不変的な世界に腰を据える事に慣れきった僕は、忙しない男に戸惑うことが多かったが、新しい空気を吸い込むのは、悪くないとも思っていた。



勤めだしてからの友人のタクヤは、意外にも僕と同じ高校だったと言う。



知らなかったのも無理は無い。一年生の二学期中頃、彼は自主退学していたからだ。



理由は聞いていないが、何かあったのだと思う。



偶然、懇意にしている取引先の専務が囲っている女の子に…まぁ、愛人というやつに、携帯電話の契約を頼まれた。



そこの店長がタクヤだったと言うわけだ。