なんというか、彼女にまとわりつく、退廃的な雰囲気は、色事を知り尽くしたスレた感じにも、また逆に、全く男女の色恋に興味がないような、どちらともとれるものだった。



…後々に、どちらともが正解であると分かるのだが、今は分かる訳もなく。




熱心にナツミに話し掛ける僕を、タクヤはニヤニヤして見ている。



そんなに露骨に見るんじゃないって。



こういう子こそ、笑わせてみたいと思うじゃないか。



ナツミに興味を持ったのも、他の子と同じ。



新しいヘアワックスを試すような、そんな気持ちだった。



僕には珍しく、しつこいくらいに粘って、ナツミのアドレスを聞いた。
電話は嫌いだと言うので、電話番号は聞かなかった。メールはその次に苦手だとも言っていた。



しばらくは押したり引いたりしてみたが、焦れったいほどナツミはつれなかった。



何ムキになってんだ。
そう思ったら、馬鹿馬鹿しくもなりそうだったが、
気付くと携帯を眺める時間が増えていた。