「あんたさ、何があったか知らないけどちゃんとみーちゃんと一緒にいなさいよ?」

「わかってるよ……。けど、あいつは俺が隣にいることを望んでない」

「どういうことよ?」

姉貴は、首をかしげた。

「だから、アイツには好きな人がいるんだよ。俺とは真逆な美男子を」

俺は、姉貴から目をそらしつぶやいた。

「あのさ……そういうのがいいんじゃないの?」

「っは?」

姉貴の一言が全く理解できなかった。

「私もさ、中学の時カズと距離あったんだよね。カズが、別の女と付き合ってたんだよ」

意外だった。

カズくんは、ずっと姉貴一途だと思ってたのに。

「けどね、最終的にはあっちの気持ちかもしれないけど……信頼できる人、一緒にいて安心する人を選ぶんだよ。だから、私はすごい考えて悩んで告ろうか迷ったけど、中3のとき高校が合格したらカズに告ろうって決意したんだ。で、告ったらカズは返事は早くはなかったけど……やっぱ、私がいいって言ってくれたんだ。だから、あきらめちゃダメだからね」

初めて聞いた。

姉貴がカズくんと付き合うまでの道のりを。

「サンキュ。俺、もう少し頑張ってみる」

「そうよ、もしねみーちゃんが付き合ったとしても…あんたは、【幼なじみ】っていう特権があるんだから。そこらへんにいる、みーちゃんファンにはない特権があるんだから。それだけは、覚えておきなさいよ」

姉貴は、そう言って部屋から出て行った。

「サンキュ、姉貴」

姉貴が部屋から出て行ったあとつぶやいた。

そうだよな。

俺は、みーの【幼なじみ】だもんな。

例え、森本と付き合ったとしても【幼なじみ】としての関係は崩れることはないんだ。

【幼なじみ】

この関係がいつまでも続きますように―――

俺は、一人神様に願っていた。