そのあと、ずっといろんなことを話した。

なんで、森本くんが剣道をやってるかとか。

私がテニスをしている理由とか、将来のこととか。

森本くんの話に、夢中になりすぎて携帯のバイブが鳴っていることに気づかなかった。

「おいっ」

背後から、男の人が聞こえた。

私は、後ろを振り向く。

そこには、息切れした翔がいた。

「お前、ここに居たのかよ……はあ…はあ…。ずっと、探してたんだから」

珍しく、翔は怒鳴ってる。

そうだった、翔たちの所から抜け出してきたんだ。

「みんな、心配してるのになんなんだよ、お前は!!森本とキスしやがって」

「……そ、それは……」

「言いわけはいいから。早く戻るぞ」

そう言って、翔は私の手首を掴んだ。

「ちょっと、渡辺君」

森本くんが、翔から私を離した。

「なんだよ」

翔は、明らかにキレている。

「そんな言い方ないんじゃないの?つか、人の彼女を勝手にどっかに連れ出さないでよ。いくら、【幼なじみ】でも許せないな」

森本くんは、挑戦的な目で翔を見つめている。

翔は、見下すように森本くんを見ている。

「勝手に連れ出したのは、お前だろ?人の【幼なじみ】を。こっちは、みんなで遊んでたのに、お前がこいつを誘った所為で、えらいことになってるんだからな」

「そんなこと言ったって仕方ないじゃん。浜辺さんが、渡辺君じゃなくて僕を選んだんだから」

「……あっそう、わかった。【幼なじみ】から伝えとく。コイツ、すげー泣き虫だから。誰かが隣にいなきゃ、どうしようもできない奴だから。ちゃんと、支えてやってくれ。けど、1回でも泣かしたら……もう1度俺の所に返してもらうから。俺の【幼なじみ】を」

そういうと、翔は背中を向けて歩いて行った。

翔の大きな背中を見ると、なんだかさみしくなってきた。

どんどん離れていく気がして。

【幼なじみ】から卒業していく気がして。