「かんちゃんったら、またそぉやってぼーっとしてる。私が殺人鬼なら間違いなく刺してるよ?」


現実へと誘導するその声は不満だらけだ。と思って見上げると、声の持ち主の表情はどちらかと言うと不安だらけ。


「どうかした?」

伊奈だってたまには優しい女の子になれる。週単位の確率だが。

妙に勘の鋭い彼女のこと。
小首を傾げて、落ち着かない様子の彼女に何かを見透かされてそうで、少々居心地が悪い。


「なんでもない。」

我ながら気の抜けた返事。
目をふいとそらす。

その返事に気を悪くしたのか、伊奈が机の上の赤ペンをさっと奪い取った。

そのまま、声を発する間もなく、赤ペンが私の二の腕に突き刺さる。


「どうだ!参ったか!」