「直樹君は、320号室に移動したわ。だけど、今は親御さんが…って愛ちゃん!」
古賀さんの話を最後まで聞かずに走り出した。
ハッハッと、息を切らしながら走る廊下は長く感じる。
ナオが…無事でありますようにー…。
必死に願いながら走り続けた。扉まであと少しーー。
その時、中から1人の女性が出て来た。
走っていた足を止めて“誰だろう”と思った矢先ーー。
女性は扉の前で崩れるように座りこむと、小さな声で泣きだした。
「うっ…なっヒック…なお…直樹…」
女性から小さくもれる声。“直樹”と何度も呟く女性にあたしは近づいた。