屋上から出たあたしは、父親の病室に戻ろうとした。 廊下の端で、ヒソヒソと話す声が聞こえる。 気にする事じゃないと思って通り過ぎようと思った。 「ねぇねぇ、309号室の男の子…」 「あぁ、相田 直樹君でしょ。あの子がどうかしたの?」 “直樹”と聞いただけで、あたしの体は止まった。 あたしは、相手に見えないように壁に隠れた。 端で話す人達は、あたしに気づいていない。 「あの子…重い病気なんでしょ?」