私は思いきって、話しかけてみることにした。
「あの、傘無いの?」
その男子は、びっくりしたようにこっちを向き、
すぐ視線をそらして、
こう答えた。
「俺の傘、盗まれたっぽい」
思ったよりハスキーだった声に一瞬うっとりしてしまった。
いけないぜ、自分。
「え、じゃあ、これ使っていいよ」
と、私は折りたたみ傘をおずおずと差し出す。
男子は、一度出そうとした手を引っ込め、
戸惑いながらもう一度、
手を折りたたみ傘にのばした。
「・・・ありがと、超助かる」
「いいえー」
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
設定されていません
読み込み中…