私は思いきって、話しかけてみることにした。

「あの、傘無いの?」



その男子は、びっくりしたようにこっちを向き、
すぐ視線をそらして、

こう答えた。

「俺の傘、盗まれたっぽい」

思ったよりハスキーだった声に一瞬うっとりしてしまった。
いけないぜ、自分。

「え、じゃあ、これ使っていいよ」
と、私は折りたたみ傘をおずおずと差し出す。


男子は、一度出そうとした手を引っ込め、
戸惑いながらもう一度、
手を折りたたみ傘にのばした。

「・・・ありがと、超助かる」

「いいえー」