「噂って…?」 「何、あんた自覚ないんだ?」 そういって、彼はあたしの顔を覗き込む。 吸い込まれそうな、黒い瞳。 しばらくの沈黙。 (気まずい…。何か喋らなきゃ) 「あの、あたしは桜井ゆいっていいます」 「ああ、知ってるよ」 「…。あなたは?」 「安堂 爽」 安堂 爽…。 今日、お弁当の時間に友達がそんな名前を口にしていたような。 てことは (この学園の、有名人!) 「わぁ」 「は?どうかした?」 こんどは、彼が不思議そうにする。 .