家人もいないひとりぼっちの夜、私はネコをひざに抱え甘い時間を過ごしておりました。

さながら両親の留守に彼氏を連れ込んだ中学生。
ひざ枕で喉を鳴らすネコの耳をベビーオイルを浸した綿棒で綺麗に掃除しておりました。

突然!

深夜のマンションの廊下に異様な音が響き渡りました。

どんどんどん

ちょっと間をおいてドアノブをガチャガチャ揺らす音も聞こえてきます。

明らかに我が家の玄関からです。

あまりの緊急事態に顔を見合わすネコと私。

外からは電気がついているのが見えてることでしょう。

居留守を使うことは不可能。

よもや借金取り?
はたまた、ダンナの愛人か?

また、どんどんと力任せにドアを叩く音が響きます。


確実に隣の家も様子を伺う気配が!


足音をひそめ、抜き足差し足玄関へ。

ネコも義侠心にかられたか、隠れもせず私の足元から離れません。

そーっとのぞき穴から見てみると・・・。

両手いっぱいにかつおぶしの袋を抱えたうちの母の姿が見えました。

ドアを開けました。

「ピンポンしたら逃げると思ったから」

形相が必死。

その顔はさながら般若のごとく、ネコは走って逃げてゆきました。

次の日、ごみ置き場で鉢合わせした隣の奥さんへ向けた私の笑顔が自然なものだったかどうか。

ネコのお友達リストにうちの母が載る日は遠い未来のお話のようです。