実家にいたころ、クーラーが壊れた時期がありました。

今ほど灼熱の夏ではなかったので毎日夜は窓をあけて網戸にしてました。

田舎で変電所が隣にあるところだったので夜でも常夜灯がついていて明るい部屋でした。

窓をあけるようになって幾日、毎夜12時を過ぎるとお客様が訪れるようになりました。

身の丈15センチくらい、チロチロと舌を出して必ず網戸の左下から斜めに横切っていくのです。

固そうな尻尾となめらかな身のこなし。

イモリです。

イモリだのヤモリだのは縁起がいいとされてます。うちでは。
イモリは井守。ヤモリは家守。水と家を守っていると教えられてきました。

イモリとヤモリは兄弟なのか?というと実はそうではなくて
水にすんでて井戸を守る=水にすむ=両生類のイモリ 家を守る=害虫を食べる=爬虫類のヤモリ、と違う種類なんですね。

一概にそうとはいえない種類もあるようなんですが。

簡単な見分け方だと腹が赤いのがイモリ、赤くないのがヤモリ。
目が丸くてかわいいのがイモリ、鋭いのがヤモリ。
壁にくっつかないのがイモリ、スパイダーマンなみにくっつくのがヤモリ
と、いろいろ識別法があります。

ぶっちゃけ、イモリとヤモリはまったく違うと。

閑話休題。

うちに夜な夜な現れてたのは腹が赤くて目が丸かったのでイモリと断定。

横切っていくだけなのですが、日付が変わるくらいに現れて歩いていくので日増しに愛着がわいてきました。

愛着がわいたら何をするか?

そうです、名前をつけました。

ネーミングのセンスがないもので「ぽてと」
イモだから。

さりげなくささみを置いてみたり、パンくずを置いてみたりコミュニケーションをとろうと図ってみましたがぽてとのお気に召すことはなく毎日横切るだけ。

やはり両生類と愛を語るのは無理かとあきらめかけた凪の夜、見向きもしなかったぽてとが網戸の中を覗き込みました。
豆電球だけの薄暗い部屋の中でマグロ(生)をふる私と目が合いました。

反対側の窓を開けてマグロ(1㍉大)をそっとおく私。
ぽてとは明らかに興味を示しながらも何食わぬ顔で横切っていきました。


ぽてとのハートをつかむ日も近い。