「ごめん。俺がこんなんじゃ全国制覇できないっての。情けねぇ…」
先生は硬く組んだ指を口元に持っていきコツコツと唇にぶつけ、小さな声で話し始めた。
「実はさ、もうすぐ記念日なんだわ…結婚記念日。教師って1年中いろいろあるし、親の体調の都合もあったから夏休みに結婚式したんだよな。でもさ、結局、休みたって、試合や合宿なんかあって記念日なんて家で過ごしたことないんだよな。なのにあいつはいつも
「いい結果になるといいね」って笑顔で言ってくれるんだ。俺の夢が叶うのが私の夢でもあるからって、あいつは俺のことを思ってくれていて…俺が自分のことで浮かれたり、緊張したり自分のことで精一杯なのに…」
『先生のことが大好きだから…大好きな人の夢は、自分の夢なんだよ。だって大切な人が幸せになれるってことは、その人を思う自分の幸せでもあるんだから』
「でも、わがまま言ってくれよ。さみしい時はさみしいって言えばいいじゃないか…俺ばっかり甘えて…」
そう言って、勢いよくトランクを閉めた。
『先生のことわかっているから言えないんじゃない。好きだからわがまま言えないんだよ。じゃぁ、もし試合行かないでとか私とバスケどちらが大切っていったら先生どうするの?そんなこと言わせたい?先生が自分ばっかり甘えてるって思うことは、辛いと思うよ。わがままも言えない、甘えてもくれない。自分は先生のどんな存在だろうって…』
「蒼衣…」
気がついたら私の頬には涙が流れていた。

