「‥‥‥!」
不意打ちだった。
そして、それを見て少し顔が熱くなる自分がいた。
‥バカじゃん‥自分
なんだか無性に恥ずかしくなって、少し目線を逸らし、そして奴に背を向けた。
はじめから、
偉そうで、ムカつく奴だった。
初対面なのに口調はいつも命令口調。
理解不可能でムチャクチャ
でも、認めたくなんかないけど、‥優しいトコも少しはあった気もする‥
ふとそんなことを思い出したりして、また、奴に目を合わせられなくなった。
「じゃあ、‥ありがとう。」
これで最後となる言葉を小さく呟けば
「ああ‥」
という、短い返事が返ってきた。
奴が助けてくれなかったら、あたしはこうしていることさえできなかっただろう。
それを聞いて、
“ありがとう”
と、もう一度心の中で奴に礼を言った。
なんだかんだあってま、やっぱり今は“ありがとう”って感謝の気持ちがあった。
昨日のことと、奴のことをしっかりと記憶に残し
あたしは、そのまま振り返ることなく、ドアに手をかけ、この場をあとにするのだった――――

