「…ねぇ、この辺の人?」
夕兎が聞いた。
「うん。今日引越してきたの」
芙月が答える。
「…明日から二、三日実家にでも帰ってくることをオススメする」
真剣な顔で言う夕兎に芙月は訝しい顔をする。
「…なんで?」
「…悪い。ちょっと騒がしくなる」
「…知っている。たぶん、あたしもその中に入ってる」
「えっ!?」
「ほんと。だって組長の命令で帰ってきたんだもん。五年ぶりに」
「まじ??敵?味方?」
「……秘密」
「…芙月はいざというときの隠れ刀なんだ。
……龍か虎の……組員でさえ知らない」
「……そう」
二人の間に沈黙が降り注ぐ。
沈黙を破ったのは、芙月だった。
「……また、ここにくる?」
「ああ」
「そ。じゃあ、私もここにくるよ」
「ああ」
「……あなたはあなたのやるべきことを成し遂げ、信じた者を護りなさい……
私の主人からの伝言です」
「ああ」
「…また、ここで逢えることを願っています」
芙月は優しい笑みを残し立ち去った。
夕兎が心を定めた頃、日は既に傾いていた。
しっかりとしたあしどりで虎琳組へ帰った。
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