夕兎は、静かな河原の大木の下にいた。
静かな空を見上げ、静かな風に吹かれ、静かに流れる川を見送る。
「……静かだな……」
ボソリと、誰にも聞き留められるはずのなかった声を拾った人がいた。
「…ほんとに静かね」
サクリ、と草を踏む音がし、声がふってきた。
目をむけると、すらっとした女の子が立っていた。
「…………だれ?」
女の子はフッと笑って、
「私は、宮垣芙月(みやがきふづき)。…あなたは?」
「夕兎。…神谷夕兎」
「ゆうとね。わかった。
…ねぇ、なんかあった?泣きそうな顔してるけど」
「え!?泣きそう?」
目を見開き、聞き返す夕兎。
「うん。泣きそうな顔してるよ」
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