俺様王子と秘密の時間



「きゃあ………」


そんなあたしの小さな悲鳴でさえ、静かな図書室では妙に響く。

あたしは左手を取られて千秋の胸にスポっと顔が埋まる。



「オレに勝てると思ってんの?」


すぐ上から千秋の低い声で、まるで挑発するような言葉が降ってきた。



「そんなこと……」


ふいに見上げた千秋の表情が夕陽のオレンジに染まっていて、あまりにも綺麗だから言葉が続かなかった。

あたしが最近ヘンなのは……コイツが元凶なんだ。

絶対、そうだ。

甘い香りが鼻を撫でる。

千秋と視線が絡まった瞬間に、あたしは何故かキスのことを思い出してしまったんだ。


かぁああああああ。

まるで今にも溶けてしまいそう。



「椎菜……?」


ダメ……まともに顔が見れない。