静かに唇が離れていく。

千秋はあたしを押し倒した体勢のまま目を細めるようにして見つめた。

顔にかかるあたしの髪の毛を千秋は払って頬に触れる。



き………キス。

今……キスしちゃったの?


あたしは目をまん丸にして驚いたけど何も言えなかったんだ。


柔らかい唇の感触……。

その感触がキスをしたんだと理解させた。


千秋の指先が触れて、頬が火照って熱い。

でもそれ以上に千秋の唇は熱を帯びていた。

その熱に侵されたのか、あたしの体温はみるみる上昇して頭がぼんやりする。

訳わかんないよぉ……。



「よく出来ました」


千秋はそう呟いてブレザーのポケットから何かを取り出した。

『ご褒美やるよ』なんて言葉をぼんやりする中で思い出す。


あ………コレって。

千秋はそれをあたしの手に握らせた。

ピンク色のパッケージが目に入ったとともに、千秋がまたあたしの唇を奪った。



それは売り切れだった苺ミルク。


甘い……恋の予感がした。