あたしの願いも虚しく、二つの足音がピタリと止まった。

あたしたちが身を潜める中庭の芝生の前で。


ひぃいいいい。

う……嘘でしょ?

なんでこうなるのよぉ。



「あ!反省文の紙忘れた」

「まじぃ?取り行く?」


そんなのイイから早く行ってぇ!

お願い……神様ぁ。

助けてぇええ。


バレるんじゃないかってヒヤヒヤして今にも泣きそうになってしまう。



「んー……、あとで田口に貰うからいっかぁ!」


神様ぁ!

良かったぁああああ!

パタパタと足音を響せて女の子たちは去って行った。


安心したと同時に強く閉じた目を反射的に開けた。



でも……あたしはまた目を閉じてしまったんだ。



だって……

だって……


千秋の唇があたしの唇まであと数ミリというところにあるから。