「名前で呼んでくれたら、離れてやるよ?」
王子の長い前髪の隙間から見えるブラウンの瞳があたしを捉える。
身動きが取れない。
その瞳にあたしは吸い込まれてしまいそうになる。
「な……なな成瀬川……くん」
「違うって。千秋だよ」
「むむむ無理……だよ」
拒むあたしの左手をとって、王子は自分の頬に運んでいく。
ドキドキが止まらないよぉ。
あたし、やっぱり変だ……。
「ちゃんとこっち見ろって」
そんなこと言われても出来ないんだよ……。
あたしは目を伏せたままフルフルと首を振った。
そして王子はあたしの顎を親指と人差し指で軽く掴んだ。
「ま……待って………」
そんな抵抗も虚しく、王子の顔がだんだん近づいてくる。


