あたしは中庭に着いたというのに、そこに王子の姿はナイ。
「なんで居ないのよぉ」
ポツリと呟いた言葉が宙を舞う。
ブレザーのポケットからケータイを取り出した。
けれどアイツからは何の連絡も着てなかった。
なんなのよ……。
人がヒヤヒヤしながらココまで来たっていうのに。
なんで居ないのよ。
中庭の芝生の前で立ち尽くす自分が、何故かわからないけどバカみたいに思えた。
その時………
背中が温かくなって、大きな腕がお腹に回ってきた。
突然の出来事にあたしは何が起きたのかわからなくて、固まっていたんだ。
「隙だらけだな?」
耳元で聞こえた低いトーン。
でもその声よりも、甘い香りがしてすぐに誰だかわかった。