「―――……」 千秋はあたしの耳元で言葉を発した。 けれどあたしは、 「……聞こえないよ……」 わざと聞こえないふりをしたの。 もう一度、その言葉を聞きたかったから。 意地悪な王子様が、 こんなにもあたしを欲張りにさせたんだよ。 待ちきれないといった視線を送るあたしを、千秋は再び腕の中に閉じこめた。 そして…… 「お前が好きだ……」 吐息混じりの絞りだすような声で 耳に口づけするように、 甘く囁いた……。