「お前しか欲しくなかったから」
ドキッ――。
イタズラな口調で千秋がそう囁くと、微かな吐息があたしの前髪をふっと揺らした。
「だからあの日お前がココに入ってくの見て、まじで奪ってやろうと思った」
「えっ?嘘……見てたの?」
あたしは南センパイが出入りしてるって話を聞いて、全力疾走したあの新学期の昼休み。
「情けねぇ。弱味につけこむとか、んなやり方しか出来なくて。まじ余裕なかったんだよ、あん時のオレ」
千秋は何故かあたしから目を逸らした。
嘘ぉおおお……。
だってあの時、超――余裕たっぷりの笑みで“オレと付き合え”なんて言ったじゃない。
そんな千秋が悩ましげな表情を浮かべているのを見て……、切ないような、嬉しいような、泣きそうになるような。
なんて言葉にしたらいいかわからない感情がこみあげてきて……。
あたしは口を開いた。


