「なあ、あんな至近距離でなにしてたんだ?ん?」
千秋が目を細めてあたしとの距離を縮めてきた次の瞬間。
ダンッ――!
千秋の細長い両腕が伸びてきて、いつの間にか体育館の壁に背をついていたあたしを閉じ込めた。
耳のすぐ横に手をつく千秋。
「キスされたんだろ?」
「さ……され……んんっ!」
言い終える前に唇を塞がれた。
あたしは目を閉じる間もなく、ふいに降ってきた強引な千秋のキスに唇を奪われていた。
「んっ……やっ!」
あたしは力一杯、顔を背けた。
千秋の顔はまだ息のかかる位置にあるから、心臓が口から出そうだった。
「オレを二度も置き去りにするとは、いい度胸してんじゃねぇか」
やっぱり怒ってる……。
千秋はブラウンの瞳であたしを見据えるから、身動き一つ出来なくなってしまった。
「雅弥にやられっぱなしはシャクだ」


