嫌なことをいっぱいされたり言われたりしたのに、きっともう酷いことはしないだろう。
……不思議とそう思えた。
あたしは下駄箱で靴を履いて、体育館裏まで小走りで向かった。
9月といってもまだまだ真夏日が続いているから、外は熱気でむんむんしている。
アスファルトの照り返しがきつい中を、ちょっとスピードを上げてあたしは走った。
千秋はもう来てるかな?
それとも来てくれないかな……。
二度も置き去りにしてしまったんだからいい気分はしないだろう。
体育館裏まで続く草木が多い細道は日陰になっていて、校舎から離れたせいか静かだった。
蝉の声しか響いていない。
角を曲がればすぐそこは誰も居ない体育館裏だ。
あたしは一気に駆け抜けて曲がろうとした。
「きゃあああああああ……!」


