「……父親の写真を見たらやっぱりほんとにすごくてさ。ムシャクシャしてたんだ」
涼くんはガクンと膝を折ってしゃがみこむと、小さくうずくまってしまった。
「だから持ってたカメラで撮って、センパイを困らせてやろうと思ったんだ」
千秋が気に入らないからと、そのためにあたしを利用しようとしたり、モリヤユウジに会わせたりと散々な目にあったのは確かだ。
あたしはなんて声をかけたらいいかわからずに、足元に視線を落とした。
「でも安心して?もうセンパイの写真も、王子との写真も処分したから。もちろんネガもね」
急にすぐ側で声が聞こえて顔をあげると、さっきまでうずくまっていた涼くんが目の前に立っていた。
「もう意地悪しないよ」
「ほ……ほんと?」
「ほんとにほんとだってば」
そう言って涼くんは鞄を肩にかけると「お幸せに」と笑って歩き出した。


