「すごくない!僕は“水城十蔵の息子だから”って理由で賞がとれたんだから」
「それって……」
「うん……父親のおこぼれだよ。水城なんて名前大嫌いだ……」
涼くんの幼い表情に悔しさがこめられていた。
父親のおこぼれで賞をとれたんだと知った涼くんは、どれだけ悔しかっただろう。
「誰も僕の写真なんて見てくれてないんだ……!だからみんなが飛びつきそうな新聞を作った。校内の有名人ばかり狙って」
「涼くん……」
「そうすれば僕の写真を見てくれるだろう?」
ふと顔を上げた涼くんは力無く微笑んだ。
だけど、酷いことをされたあたしは慰めてあげることは出来ない。
「夏休みに父親の写真展覧会があって、その帰りだった」
「えっ?」
「丘の上公園の横を通ったら、王子と女の人が居たんだ」
あ……。
千秋とユリさんのことだ。
その写真は今あたしの鞄の中に入っている。


