「もう何もしないよ。今日は僕、ちゃんと謝りにきたんだ」
「へ……?」
面食らいつつもこんな言葉に騙されないとあたしは涼くんを睨む。
きっとまた何かある。
絶対、騙されないっ!
「ほんとにもう何もしないから。意地悪してごめんね……?」
涼くんは廊下の壁にペタッと背中をつけて眉を下げてそう言った。
叱られた子供みたいな顔で謝るから、あたしは身体の力を抜いた。
「もうわかってると思うけど、僕の父親は写真家なんだ」
そうだ……。
千秋が言っていたもん。
水城十蔵の息子。
「僕ね、写真のコンテストとかにも応募して、何回か賞とったことだってあるんだよ」
「す……すごいじゃん!涼くん」
写真のことはよくわからないけど、賞をとったことがあるなんてすごいよ。
だけど涼くんはちっとも嬉しそうな顔をしないで、しょんぼりしたままだった。


