「うん。黒だったね。あれには女子はみんなガッカリだったらしいね……」
生徒会が黒と白のネクタイを用意する。
選ばないのなら黒のネクタイを。
もしもお姫様を選ぶならば、純白の白いネクタイを……。
「王子って大変だね」
あたしはまるで他人事みたいに、ムッと唇を尖らせて呟いた。
「「それが王子の宿命だ!」」
はーちゃんとコウちゃんの声がピッタリ重なった。
「今年は誰か選ばれるかもね?」
はーちゃんは“誰か”を強調して、ニヤッと笑ってあたしに視線を送った。
……知らないもん。
去年だって黒いネクタイで壇上に上がって、誰も選ばなかったんだから。
てゆーか、あたしの心情はそれどころじゃないんだ。
女は度胸だ。
ポケットからそっとケータイを取り出してメールを送信した。
あたしからメールを送るのは、初めてだった。
“放課後、
体育館裏で待ってます”


