「ユリはやっぱり精神的な部分で、千秋を頼ってた。それが無性に悔しかったんだ。今も昔も……」
最後は聞き取るのが精一杯な程、小さな声で、外の雨音にかき消されてしまいそうだった。
そして羽鳥は「悪い」と呟いて、あたしの肩に顔を埋めた。
生乾きのウェーブの髪の毛が頬をかすめてくすぐったかった。
胸がくすぶられる……。
「ユリと切れてねぇクセに……、シイに手出す千秋がムカついた」
羽鳥のかすれ気味の声にあたしはかけてあげる言葉が見当たらなくて。
あたしの背中に回る腕に強い力がこめられてゆくのを感じた。
頭の中に浮かんだのがあの日の放課後に羽鳥が言ったことだった。
“好きな女に相手にされない”
「は……羽鳥。好きな女の子がいたのにあたしにキスなんてしちゃダメだよ」
慰めてあげることも出来ないあたしはこんなことを口走っていた。


