春希さんはあの日、婚約指輪が入った紙袋を持っていた。
色々あって不安がっている彼女に形だけでもと、そう言っていた。
色々って……、ユリさんのことだったんだ。
「大学卒業したら婚約するって、それを聞いたユリが春希さんに会いに行ったのが夏休みだ」
羽鳥は片手であたしを抱きしめながら、テーブルの上にある写真を拾い上げた。
8月の日付が刻まれている。
千秋とは夏休み会わなかった。
あたしに何も知らなくていいと、保健室のベットで千秋は言った。
「千秋がユリと何してたかなんてオレは知らねぇから、知りたいなら千秋に聞け……」
羽鳥は低い声で言うと写真をクシャッと握りしめさらに続けた。
「ずっとユリと会っててさ……、って言ってもセックスしかしてねぇけど」
過激な言葉をさらりと口にしてしまう羽鳥。
だけど悲しげな口調があたしをいたたまれない気持ちにさせた。


