裏王子はあたしを閉じ込めたままにしていた腕を浮かした。

そしてあたしの頭の横に両手をついたまま、さっきよりも顔を近づける。


あたしの鼻に裏王子の鼻がぶつかる。


ドキッ――。


心臓がドキドキ音をたてる。

長い睫毛とブラウンの瞳がグーンと近づいてきたと思ったその時。





あたしの頬に、コイツは自分の唇をつけた。



へ………?



「可愛いな、固まっちゃってさ。じゃね」


ガラガラ……ピシャッ。

遠くで教室のドアが閉まる音が聞こえた。


な……なに、今のは?

アイツ……キスしたの?

あたしの頬に成瀬川の唇の感触がほのかに残っていることに気づいた。





「ヒッ……ぎゃあああああああああああああああ!!」


川村椎菜。

高校2年生。

最悪な新学期が幕を開けた。