……羽鳥のバイクに乗せてもらうのは今日で二回目だった。
どこへ行くのかわからないけど、羽鳥は物凄いスピードを出してバイクを運転している。
その勢いで横殴りの雨が、ヘルメットの上からあたしの顔めがけて飛んでくる。
逃れるように羽鳥の背中に顔を埋めると、スピードはもっと上がった。
「羽鳥……、飛ばしすぎ」
そう呟いたってバイクを走らせる音と、激しい雨音で当然羽鳥には聞こえていなかった。
雨に濡れたせいでワイシャツが背中に張り付いて、羽鳥の肌が透けて見える。
ギュッと顔があたるくらい掴まっても、もうあの爽やかなシトラスの香りはしなかった。
絡みつくような蒸し暑さに、むせかえしてしまいそうになる……。
しばらくして、オレンジ色のマンションの前に着くと、羽鳥はその駐輪場でバイクを停めた。


