「ちょっ……なんでぇ!?羽鳥、おろしてよっ!」
「無理」
「きゃっ……」
羽鳥は身体をねじるとぐしょ濡れのあたしの頭にヘルメットを被せた。
「振り落とすぞ?」
ジタバタするあたしに羽鳥はぶっきらぼうな口調でそう言った。
キーを回してエンジンをかける羽鳥はこのまま本当に発進させてしまいそうだ。
あたしは反射的に羽鳥の身体に腕を回した。
パッと顔を上げると、あたし達の数メートル先を千秋は歩いていた。
「千秋」そう呼ぼうとしたけれど、思いとどまる。
助けてくれたのに“ありがとう”も言わないで羽鳥のバイクに乗って。
あたしはなに考えてんのよ……。
バイクを発進させて門を抜ける瞬間、千秋の真横を通った。
あたしは何故か強く目を閉じてしまったから千秋がどんな表情をしていたか見れなかった。


