振り返ったあたしは目の前に居る彼に驚いてしまい、思わず駆け寄ってしまいたい衝動にかられた。
なんで居るの……?
いつもこうやって肝心な時に、彼は優しさを見せてくれる。
いち早く気づいたのは涼くんだ。
「可哀想な女の子を助けに来る、王子様の登場ってわけ?」
皮肉をこめて言った涼くんに、誰だよコイツ?と訪ねるモリヤユウジ。
「千秋……」
名前を呼んだだけで涙腺がとたんに緩んでボロボロと熱いモノが溢れた。
「王子様ぁ?んだよそれ。コイツ、王子様気取りなのかぁ?」
あたしの耳の側で、涼くんに問いかけるモリヤユウジは小馬鹿にしたように笑った。
「“気取り”じゃなくて、王子様なんだよ」
雨のせいで少しだけ濡れた髪の毛をかきあげると、千秋は涼しい顔を浮かべてそう言った。


