確かに涼くんの刺激的なあの香りがほのかに残っている。
てゆーか、千秋からもなんか甘い匂いがするんですけど。
香水とは違う美味しそうな匂い。
「きゃっ……」
あたしの胸に千秋は犬みたいにクンクンと鼻を近づける。
言えない……。
恋愛ネタばかりを記事にしてる、1年の新聞部の涼くんに呼び出され交換条件を突き付けられました。
なんて言えないよ……。
「このオレに、嘘つけると思うなよ?」
ど……どうしよ。
目をキョロキョロさせながら口ごもってしまうあたしに、千秋は挑発的な口調で言う。
まずい……、何か言わなきゃ。
「水城と会ってたのか?」
「えっ?」
な……なななんで?
水城くんのことなんてあたしは一言も言ってないし、むしろ彼の名前すら出してない。
「オレが知らないとでも思ったか?」
うっ……。
そんなあたしの心を見透かしたように言うと、千秋は上履きを脱ぎ捨ててベットに身体を倒した。


