千秋は顔をあげると口端を吊り上げて「フッ」と笑みをこぼした。
そして立ち尽くすあたしの腕を掴み自分の方へ引き寄せる。
「わあっ……」
ビックリしたせいでマヌケな声が口から出た。
千秋は座ったままで、あたしを見上げるようにしてこっちに目を向ける。
「ぷっ……小っせぇな、お前」
そんな余裕かました上目遣いはやめてよぉおおお。
千秋と比べたらあたしはチビだ。
長い腕があたしの頭の後ろに回って、そのままゆっくり引き寄せる千秋。
少し顔をあげた千秋のピンク色の唇が近づいてくるから、あたしは自然と目を閉じた。
けれど触れる寸前。
「男の匂いがする」
「へ……?」
千秋の息がかかったかと思ったらそんなことを言われた。
男の匂い……?
あ……。
さっき涼くんと一緒に居たから?
「お前、なにしてたんだ?ん?」
うっ……。


