あ……あれ?

今のってもしかして。


数分も経たないうちに教室の後ろのドアから羽鳥がやって来た。

ウェーブのかかった髪の毛の前髪をちょこんと結んでいた。

人差し指でクルクルと鍵を回しながらご機嫌な様子。



「おーっ、雅弥!ついに免許とったんだ?」


沈んでいたコウちゃんがパッと明るくなって羽鳥の元へ駆け寄る。



「ねっ、後ろ乗せてよ?」

「バーカ。オレの後ろは特別な女専用なんだよ」

「うわっ……雅弥、酷い」


目を輝かせながら言うコウちゃんに羽鳥は物凄く悪いイタズラっ子みたいに言った。


二人のやり取りをあたしはただ横目で見つめていると、羽鳥がこちらに向かって来た。

どんな顔をしたらいいかわからなくて目を伏せる。


だけど包みこむような優しい羽鳥の手が頭にポンと置かれた。

くしゃっと髪を撫でられて、千秋とは違う爽やかなシトラスの香りが胸をくすぶった……。