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『キミ、大丈夫?』
“近藤葉月”と書かれた受験票を手にガチガチに緊張するあたしに声をかけてきたのはメガネをかけた細身の男。
メガネの奥の瞳は冷たそうに見えた。
『別に平気……』
そっけない態度であらしったつもりなのにメガネ男は引き下がらない。
『そんなに緊張しなくても、キミはきっと受かるよ』
『はぁ?なんなのアンタ?』
『目の下、クマが酷い。一夜漬けしただろ?頑張ったんだから受かるよ』
あ……。
昨日は一夜漬けだった。
てゆーかなんなのコイツ?
それだけ言ってメガネ男は瞳を緩ませて微笑んだあと去って行った。
受かる確証なんてないのに妙に安心したあたしは、さっきまでの緊張感は消えていた。
メガネ男の言った通り、あたしは見事受かった。
試験会場で彼を探したけどもう見つけられなかった。
“ありがとう”が言えないまま。


