チラッと千秋を盗み見みすると、目を細めて笑いを含んでいた。
……なによ、なによ。
なんなのよ、その笑いは。
プイッと目線を下に落とすと視界の隅っこで何かが動いた。
長い腕が伸びてきて、あたしの肩に触れたと気づいた瞬間、グイッと抱きよせられた。
そのはずみで耳を塞いでいた両手がパッと外れた。
「続けるってどういうことかって?」
千秋の息が触れるように耳にかかって、あたしは固まってしまう。
ピクッと肩が跳ねた時、
「オレの女ってこと」
直接的な言葉にも似たそのセリフを囁くように言われた。
聞かなければ良かった。
こんなこと言われたら、「好き」だって言われたわけでもないのに舞い上がっちゃうよ……。
それを求めたのは、あたし。
千秋に「欲張り」なんて言っておきながら、欲張りなのはあたしの方だった。
自分がこんなに欲張りだなんて、知らなかった。


