「きゃ……」
あたしは千秋の真ん前に、まるで置物のようにちょこんと座っている。
「髪、濡れてるけど?」
「ち……千秋だって」
お互いからホテルのシャンプーの匂いが漂う。
美味しそうなフルーツの匂いは、あたしの思考を乱していく。
「ったくお前は……」
な……なに?
千秋は缶コーヒーを置いて、あたしの手からタオルを奪った。
「ちょっと……」
「いいからおとなしくしてろ」
「はい……」
あたしったら、情けないよぉ。
千秋はタオルを手にすると、まだ乾いていないあたしの髪の毛を拭いていく。
ドキドキが止まらなかった。
タオルの隙間から見える千秋に視線を向けると、一度目が合った。
「は……春希さん元気?」
何か話さなきゃと思って口から出たのは何故か千秋のお兄さんのこと。


